ドクターコラム

2024.05.10更新

GWを越え不順な天候が続きますが、基本的には過ごしやすい良い季節になってきましたね。
今日は子宮脱についてお話ししましょう。

子宮脱とは子宮を支えるじん帯が緩み子宮が下がってしまい、最終的には腟から体の外に出てきてしまう状態です。中高年の女性に非常に多く、出産経験のある方なら誰にでも起こる可能性があります。初期には入浴中などに股の間にピンポン球のようなものが触れ、ビックリして受診される方が多いです。進行すると、日中歩いているときなどに何かが下がっている違和感が出てきて、それが夕方にかけて強くなっていきます。夕方以降に症状が強く出るのは、日中の動きで腹圧がかかり臓器を押し下げるためです。寝ている間は腹圧がかからないので、朝には症状が軽減しています。
出ているものは子宮が多いですが、手術で子宮を摘出した後に腟壁が出てくる腟断端脱。腟の前側にある筋膜が緩むことで膀胱が出てくる膀胱瘤。腟の後ろ側にある筋膜が緩むことで直腸が出てくる直腸瘤など様々な種類がありこれらが合併して起こることも多くあります。
通常、痛みはなく命に関わるものではありませんが、放置していると出ている子宮が擦れて出血したり、トイレが近くなったり、逆に尿が出にくくなり腎臓に負担がかかったり、また便が出にくくなるなど、日常生活に支障をきたすことがあります。
子宮脱の最大の要因は妊娠・出産、加齢です。子宮を支えるじん帯は妊娠で子宮が大きくなると引き延ばされ、さらに分娩時胎児が腟を通る際にも引き延ばされます。この引き延ばされたじん帯が加齢とともにさらに伸び、子宮を支えきれなくなってしまい子宮が脱出してしまうわけです。ですから妊娠・出産経験が無い方、帝王切開で分娩した方は、子宮脱を起こすことはほとんどありません。また腹圧も影響するため肥満、便秘による排便時のいきみ、慢性的なせき、重いものを持つ仕事なども子宮脱を起こす要因となります。
治療は、まずは何と言っても骨盤底筋体操。加齢で伸びてしまったじん帯を筋トレして引き締める体操です。骨盤底筋はお尻(肛門)を引き締める筋肉ですから、料理や読書、入浴時、寝る前などに行うなど生活の中に取り入れて頂くと習慣化し長く続けられるでしょう。当院では専用のパンフレットを用い骨盤底筋体操の指導をしています。初期であれば2~3か月で効果を実感できるようになります。この骨盤底筋体操は尿失禁を合併している方にも有効です。同時に腹圧によって症状を進行させないために、ダイエット、せき・便秘の改善、また日ごろから重いものを持たないようにするなど生活の見直しも大切です。
骨盤底筋体操や生活改善で中々効果が認められない時には腟内にペッサリーを挿入し子宮の出口に固定して子宮が出てこないようにおさえます。出し入れする時には若干の不快感があるかもしれませんが、日常生活では入っていることを忘れてしまうくらいの方が多いです。なので長期間入れっぱなしとなる方がいらっしゃいますが、長期間の留置では出血したり、炎症・癒着が起こることがあるので、必ず2~3か月に1回は受診して交換してもらって下さい。
それでも進行する時には手術です。腟から子宮を摘出し、膀胱と腟、または直腸と腟を支える筋膜・じん帯を補強する膣式子宮摘出+腟壁形成術などが一般的ですが、最近では腟壁と膀胱の間にメッシュを挿入して臓器を支える経腟メッシュ手術、腹腔鏡下仙骨腟固定術など最新の術式も出てきました。

繰り返しになりますが、子宮脱は出産経験のある方なら誰にでも起こる可能性があります。つまり若いお母さんでも将来なる可能性があるということです。今お悩みの方はもちろん、若いお母さんにもこの子宮脱について知った頂き、今のうちから骨盤底筋体操などしていただき備えて頂けたら幸いです。
根本産婦人科医院  院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

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