ドクターコラム

2024.04.12更新

このコラムを書いております4月9日は「子宮(49)の日」です。あまりご存じない方が多いと思いますが、記念日登録されているれっきとした記念日だそうです。この日を中心に日本全国で子宮がん予防・啓発キャンペーンが行われますが、まだまだ皆さんの耳に届く感じではなかったのではないでしょうか?この「子宮の日」は「子宮頸がんを予防する日」という意味合いが強いのですが、子宮頚がんについてはこのコラムで何回も触れてきましたので、今日はあえて、もう一つの子宮がんである「子宮体がん」についてお話ししましょう。
子宮体がんは子宮の奥、内膜部分に発生するがんで、子宮頸部(手前)に発生する子宮頸がんとは異なります。子宮体がんのほとんどは子宮内膜から発生するため、一般的に「子宮体がん」のことは子宮内膜がんともいわれます。
子宮体がんは国が定めるがん検診の対象にはなっていません(50歳以上は、市のがん検診に追加できます)ので、子宮体がんを早期発見するために普段から気をつけたい症状や、リスク因子を知っておくことが大切です。
初期からの症状としては、不正出血です。子宮体癌の9割の方に認めます。不正出血は、月経不順、ストレスなどでも起こりますが、色とか量とか関わりなく、生理ではない出血があったら不正出血として必ず婦人科を受診しましょう。閉経後も同様です。進行すると下腹部痛、性交痛、腰痛、下肢のむくみなどの症状が現れることもあります
次に原因ですが、子宮内膜を増殖させる働きがある女性ホルモン、エストロゲンの関与が分かっています。エストロゲンの働きが過剰になると子宮内膜が増殖しすぎて、子宮内膜にがんが発生しやすくなるというわけです。ですから、まず、妊娠・出産経験がない方はリスクが高くなります。妊娠・授乳中は一定期間エストロゲンの働きが抑えられますのでエストロゲンへの暴露が無い時期を設けることが出来るわけですが、妊娠・出産の経験がないとエストロゲンにさらされる状態に休みがないということになり、子宮体がんのリスクが高くなるわけです。同じ理由で30歳以上で月経不順がある方もハイリスクです。閉経までエストロゲンの分泌はあまり変わりませんが、月経不順があると年齢と共に子宮内膜の増殖を抑えるプロゲステロンの分泌が低下します。その結果、月経不順が長期間ある場合は、エストロゲンが相対的に多くなり子宮体がんのリスクが高くなります。また肥満もリスク因子です。エストロゲンは、卵巣以外に体の脂肪組織でもつくられているため、肥満があるとエストロゲンの分泌が過剰になります。BMIが27を超えると子宮体がんのリスクは2倍近くになることがわかっています。
また子宮体がんの2-5%程度は遺伝性のものとされます(Lynch リンチ症候群といわれます)。血縁者に50歳未満で子宮体がん、大腸がん、胃がん、泌尿器系のがんなどを発症した人がいる場合は、子宮体がんになる可能性がやや高いと考えられるため注意が必要です。

子宮体がんの好発年齢は、子宮頸がんに比べてやや高齢で50~60歳代とされています。しかし、昨今の女性を取り巻く社会状況の変化、 未妊、肥満などの要因に加え、遺伝の関与も明らかとなり、比較的若い年齢で子宮体がんを発症するケースも少なくなくなってきました。月経ではない出血があった場合は必ず子宮癌検診を受けて下さい。
根本産婦人科医院 院長  根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

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