ドクターコラム

2023.11.24更新

今回は、40代以降の女性に多い、手のしびれ、痛み、腫れについてです。

このコラムでたびたび更年期障害について述べてきました。更年期の不調というと、滝のように汗が出る、ホットフラッシュ、首や肩がひどくこる、不眠、不安感や抑うつ感といった症状のイメージが強いかもしれませんが、腰痛や関節痛を訴えたりする人もみられます。特に手指がしびれ、痛みが出てきて、気がつくと手指の関節が腫れてきていた、などと訴える方が多いです。これらの不調については、「長年に渡る手の使い過ぎ」はたまた「年のせい」などと考えあきらめている方が多いです。もちろんそうした手指関節の腫脹については、リウマチなど自己免疫疾患の現れであることもありますので精査が必要ではありますが、更年期に減少してくる女性ホルモンであるエストロゲンが関与している可能性があることが分かってきました。これはエストロゲンには関節の動きを維持したり、腱を保護する働きがあることが分かってきたからです。更年期の時期、手指の関節の動きが悪くなり痛くなってきた、痛いから手を強く握れなくなったなどの状態を放置していると、さらに炎症が進み、腫れ、しびれを伴うようになると、やがて指が関節から変形するといった症状が現れるため注意が必要です。この手指関節の腫れ、変形は長年にわたって家事をし続けている中高年の主婦によく起こり、ヘバーデン結節( Heberden's node)やブシャール結節(Bouchard node)などと呼ばれていますのでご存じの方も多いかと思いますが、この原因が急激にエストロゲンが減少するのを放置することである可能性があるということです。ホットフラッシュなど典型的な更年期障害の症状は比較的急激に発症するので、「そろそろ私も?」と気がついて頂くことも出来ますし、発症が急なだけホルモンを補充することの効果も比較的早く期待できます。しかし関節の変形は、その変形が完成してしまったら元に戻すことは容易ではありません。そこで早めの対策が大切になるということになりますが、ここで知っておいて頂きたいことは、実はこのエストロゲンの減少、30代半ばから徐々に始まっているということです。ですから早めの対策とは、30代の内からエストロゲンの減少に備えて頂くということです。とはいえHRT(ホルモン補充療法:前出のコラムを参照ください)の適応となるほどエストロゲンが減少しているわけではありませんし、また30代からHRTというのもかなり抵抗あるでしょうから、エストロゲンと似た化学構造を持ちエストロゲンと同じような働きをするエクオールを摂取することをお勧めしています。エクオールは大豆などに含まれるイソフラボンの代謝産物であるため、豆腐などたくさん摂ればいいということになりますが、話はそう簡単でないことはこのコラムで以前かなり詳しく説明しておきましたのでご覧頂くといいと思います。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2023.11.17更新

今日は、早発閉経についてお話させてください。
日本人の閉経の平均年齢は50才と言われていますが、それよりも10年以上早く閉経してしまう方がいらっしゃいます。鬱陶しい生理が無くなり清々したと言う人もいますが、喜んでいる場合ではありません。無月経、つまり3カ月以上月経がないという状態になったということは、それまで生理を回していた女性ホルモンが無くなった、あるいは働くなった可能性があります。この卵巣の機能が低下するという状態を卵巣機能不全といい、40歳未満で無月経となる場合を早発卵巣不全(premature ovarian failure:POF)といいます。POFは40歳未満の女性の1%に起こりうる決して少なくない病態です。POFを発症する要因は様々考えられていますが多くの場合原因不明です。細かい話をしますと、POFには卵巣内の卵胞がほぼ無くなってしまう早発閉経と、卵巣内にまだ卵胞はあるけれどもホルモンに対し反応しなくなり結果として無排卵・無月経となるゴナドトロピン抵抗性卵巣症候群の2つが考えられています。
いずれにしても、この女性ホルモンが無くなった、働くなったという状態を人よりも10年早く迎えるということは、人よりも10年長く女性ホルモンが不足しているという状態を経験せざるを得ないということです。
先ずこれは人よりも10年早く更年期障害に見舞われるということを意味します。更年期障害につきましては以前このコラムで触れましたのでご参照下さい。更年期障害も大変ですが、より心配なのは高コレステロール血症と骨粗鬆症です。女性ホルモンが月経を回すだけではなく、根本的な女性の健康に貢献している、具体的にはコレステロールを分解する働きと、骨代謝を調整する働きがあることは前回のコラムで述べました。ですから、人よりも10年早く閉経するということは、人よりも10年早くコレステロールを分解してくれる人がいなくなる、あるいは骨を作る人がいなくなるということですから、高コレステロール血症による脳卒中、心筋梗塞等のリスク、そして骨粗鬆症による骨折のリスクが高まってしまうわけです。
ですから、40才未満で3カ月以上月経が無い場合は、必ずホルモン値の血液検査に来てください。また卵巣内に卵胞がまだあるか心配な場合は抗ミュラー管ホルモン(Anti-Mullerian Hormone:AMH)というホルモンを測定することで分かります。検査の結果POFと診断されても、不足したホルモンを補えばいいだけです。ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy:HRT)につきましても以前のコラムで述べましたので見て下さい。

その他、女性ホルモン、エストロゲンには丸みを帯びた女性らしい身体作り、頭髪や皮膚に潤いを与える等健康的な身体を作る役割も果たしています。思い当たるときは、まずご相談にお越し頂くといいと思います。自身の体験も含め、経験豊富で優秀な女性スタッフも相談に乗ってくれますよ。ものすごく良く勉強しています。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2023.11.10更新

過ごし易くなってきました。一気に冬に向かいそうです。このコラム、先週(11/3)は祭日でしたのでお休みでした。

前回、更年期中についてお話しましたが、今日は更年期後にご注意いただきたいこと。
市や職場の健康診断でコレステロールが急に上がり、びっくりして駆け込んでくるという方がしょっちゅういらっしゃいます。「若いころに比べて脂っぽい、美味しいものばかり食べてるわけではないのに何で?…」などとやや怒り気味で(笑)。ご存じの通りコレステロールが高いと動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞などになりやすくなるなどと言われているのでご心配はもっともです。実はこれ、更年期以降の女性の、ある意味宿命といえることです。と言いますのも、それまで潤沢に分泌されていた女性ホルモン(エストロゲンと言います)は、生理をうまく回したり、妊娠する条件を整えたりするだけではなく、実はコレステロールを分解するのに役立つ、つまり肝臓での特に悪玉コレステロールの代謝を促進する働きをしていたのです。つまり男性と比べて女性は、「若いころはエストロゲンに守られていた」と言っても過言ではありませんが、更年期以降、それまでコレステロールを分解してくれていたエストロゲンが少なくなるわけですから、当然コレステロールが分解されずに残ってしまう、つまり高コレステロール血症になりやすいということです。ですから、更年期以降はこれまで以上に食事に気を使い、適度な運動を心がけて頂くとともに、血液検査等定期的なチェックをお願いします。
次に骨粗鬆(こつそしょう)症。骨粗鬆症は、骨が軽石のようにスカスカになってしまい、骨がもろく折れやすくなる状態です。いったん骨折すると寝たきりになってしまうこともあります。骨も皮膚や髪と同じように新陳代謝を繰り返しています。古くなった骨は壊され、新しい骨が補われています。この古くなった骨を壊す細胞を破骨細胞といい、新しい骨をつくる細胞を骨芽細胞といいますが、この破骨細胞が骨を壊すスピードと、骨芽細胞が骨をつくるスピードの絶妙なバランスで骨量が安定し強さが保たれているのです。一方、エストロゲンには破骨細胞の働きを適度に抑制する働きがあります。つまりエストロゲンが少なくなると、骨を壊すスピードが抑制されず壊され過ぎてしまうため骨量が減ってスカスカになってしまうわけです。ですから更年期以降、骨に対しても骨を強くするための若いころ以上の食事の注意、適度な運動が必要であることは言うまでもありません。またこの骨の変化は痛みが出る、あるいは骨折するまで気がつかないことが多いですから、定期的な骨量測定などのチェックをお願いします。

今回は更年期以降ご注意いただきたい、特に高コレステロール血症と骨粗鬆症についてお話させて頂きました。次回は40才未満で閉経に至る早発閉経についてお話しましょう。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

スタッフブログNEW Babies献立日記