ドクターコラム

2024.02.23更新

本日はダイエット、特に思春期のダイエットについてお話しさせてください。最近になって生理が急に来なくなったと来院される中高生の中で、よくよく聞くと急激な体重減少があり、ご本人が無理なダイエットをしていたというケースがまた増えてきているようです。

イタリアでやせ過ぎのモデルはファッションショーに出演できなくなったことなどに象徴されますように、不適切なダイエットは多くの先進国で社会問題になっています。にも関わらず日本の若い女性は「やせすぎ」の傾向にあります。テレビや雑誌、SNSなどの影響を受けてのことであろうと思いますが、若い女性、とりわけ、成長期である思春期の女性が過剰なダイエットをするのは実はとても危険なことのです。
そもそも充分な栄養を摂取しないということが続くと体は低栄養の状態になります。体がこの低栄養状態に長期間晒されますと、体内では様々な機能低下が起こります。貧血・低血圧・不眠・免疫力低下といった症状に加え、精神的にも疲れやすい・無気力・注意散漫などの障害が現れることがあります。
そして無月経です。実は人間の体の中身は原始時代からほとんど変わっていないそうです。原始時代で急激に体重が減少するということは食べるものがないことを意味します。自分が食べるものがないのに妊娠してしまいますと子供を育てられません。ですから妊娠しないようにホルモンが動きその結果生理が来なくなるわけです。ですから急激な体重の減少に続く無月経という現象は、妊娠しないように体のシステムが引き起こしているということも考えられています。人間の体は機械ではありませんから、一度失ったバランスを取り戻すのは容易でない場合があります。ですから思春期の過剰なダイエットは、無月経の一因となり、ひいては将来の妊娠に悪影響を及ぼす可能性があります。仮に妊娠したとしても、子どもが低出生体重になる可能性があります。低栄養なのですから当たり前ですが、実際、日本では若い女性のやせすぎとともに、低出生体重児の増加が問題視されています。この低出生体重児、他の先進諸国では社会が豊かになるにつれ減少しているという事実からしましても、これは日本特有の現象と言えます。さらに低出生体重児は、将来の生活習慣病のリスクが高くなる可能性も示唆されています。無謀なダイエットは将来の自分のお子さんの病気を引きおこす可能性があることも知っておいてください。

また、これまで何度もお話していますが、女性ホルモンは月経・妊娠・出産に重要な役割を果たすことは言うまでもありませんが、それだけではなく女性の健康そのものに重要な役割を果たしています。
次回はこの点についてお話したいと思います。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.02.16更新

冬本番の寒さも一休みといったところでしょうか。少し過ごし易い気候が続いてますね。
本日は低用量ピルの連続投与について。

これまでの「21日間内服後7日間休薬またはプラセボを内服して頂き、消退出血を起こしてからまた次のシートへ」という飲み方を周期投与といいますが、それに対して休薬期間を設けずにずっと飲んで頂く方法が連続投与です。連続的に内服するということは休薬期間が無いので、多くの方が消退出血(月経)が起きなくなります。月経が無いことで、月経痛や過多月経による貧血、PNSなど月経にまつわる不都合もなくなるとことが期待できるので、周期投与で改善が今一つだった方々からまずはお勧めしてきました。この連続投与については、何回かこのコラムで軽く触れては詳しくは又の機会にと後回しにしていましたが、「月経が毎月無くていいの?」というご心配も当然で、そういうお声がチラホラと聞こえてきまして遅まきながら今回ガッチリやりたいと思います。ガッチリと言いましても、結論は「現在すぐの妊娠を望んでいないのであれば、毎月の月経は必要ない」が医学的に正しい言い方になります。そもそも昔の日本人女性は平均約5回の妊娠出産を経験していました。妊娠期間中、授乳期間中は月経が無いので、その分現代の女性に比べ月経回数が少なく、さらに昔の女性は初経が遅く、閉経が早かったことを考慮しますと、昔の女性は現代女性に比べ300回も月経が少なかったという試算もあるほどです。それで昔の女性は何の問題もなかったわけですから、例えば連続投与で10年間月経が無いという期間を過ごしたとしても12×10=120回の月経が無いだけなのです。むしろ、現代の女性はあまりにも過剰な月経を経験させられているという言い方さえ出来ますので、当初は周期投与で効果が今一つの方に勧めてきました連続投与ですが、今後は主流になっていきます。
その他、確認ですが、低用量ピル連続投与中に月経が無いことで月経血や子宮内膜が子宮内にたまることはありません。低用量ピル連続投与の安全性や、血栓症リスクに、周期投与に比べ有意な差はありません。またピル服用中止後の月経再開、妊孕性の回復は周期投与と同じで、連続投与終了後94.7%が2カ月以内に月経再開または妊娠することが確認されています。

とりあえず、現在周期投与中の方で、消退出血前後に不快な症状(痛み、量、PMSなど)がある方は連続投与という選択肢がありますので是非ご相談下さい。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.02.09更新

思春期からの低用量ピルについてもう少し。

まず低用量ピル内服中に月経量が減少、あるいは月経が来なくなって心配される方がしばしばおられます。受精卵が着床しなかった場合の子宮内膜が排出されるのが月経血ですが、これはピルに子宮内膜を厚くしないという作用があるためで、服用をやめれば戻ってきますので心配することはありません。また月経をデトックスのように感じておられる方が多くおられ、月経が無いことで月経血や子宮内膜が子宮内にたまってしまうのではと心配される方も多いですが、これも明らかに勘違いですね。元々低用量ピルの作用で内膜は薄くなっているわけですから、無いものが出ないのは理にかなったことです。
それどころか、最近では低用量ピルをずっと飲み続ける連続投与という方法が主流になりつつあります。ずっとと言いましても、具体的には約3カ月飲み続け、一度月経を起こしてもう3カ月というリズムです。詳しくはまた別の機会にでもと思いますが、このように、医学的には低用量ピル服用中、毎月月経が来る必要ありません。ちなみに連続投与の安全性や、ピル服用後の月経再開、妊孕性は通常の使用方法と同じですし、むしろ連続投与の方が月経量改善、月経痛改善に効果が高いという研究結果も出始めています。
一般の方も含めた調査で割り出された試算ですが、わが国では月経随伴症状のために1年間で約7000億円!!もの経済損失があるとのことです。これは月経痛などの症状により欠勤を余儀なくされたり、仕事のパフォーマンスが下がったりすることが原因でしょう。また女性の社会進出、特に昇進への影響は明らかになっています。これはもちろん中高生も同様で、海外のデータになりますが月経困難症のある9-18才の方の調査では、月経困難の無い方に比べ欠席する割合が約4倍になるという研究結果が出ました。海外では高校生にも生理休暇をとの動きもあるようですが、日本はまだまだですね。休むにしても、特に担任が男性であると言いにくいということもあるでしょう。また部活の顧問が女性なのに理解がなく、やる気が無いと判断されレギュラーを外されたなんてこともありました。お母さんはじめ女性の方が厳しいかもしれません。頭ごなしに我慢しなさいとか、怠けてるとか言わないで、どうか理解してあげるためにも一度医療機関を受診させてください。いずれにしても学業・部活等に支障を来すことはもとより、欠席日数が増えることで受験の際の内申点に影響が出るのではという心配も生じます。

月経困難で受験勉強に集中できないことを避けるため低用量ピルを開始したところ、生理痛で学校を休むことが無くなり、さらに受験日当日に月経があたるのを避けるため月経移動ピルで対応し受験に成功できたとか、同様に部活の練習・大会でのパフォーマンスが維持できたなどと喜んでいただくことはしばしばです。

方法は山ほどあります。ありますが、患者さんに合わせてオーダーメイド的に対処しないとうまくいきません。まずは良く分かっている医師のいる医療機関を受診してくれるといいと思います。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2024.02.02更新

今日は思春期から低用量ピルを始めるにあたり、皆様からご質問が多い点についてお話しましょう。

まず、一般的に想定されている初期の副作用として、嘔気、嘔吐、頭痛、不正出血などがあります。生活に支障を来すほどの症状がありましたら、ピルの種類を変えるなどお話を伺いながら対処して参りますので遠慮なくご相談下さい。ただしこのような飲み始めの不都合は、飲み始め2~3カ月もしますと無くなってくることが多いですので、可能なら頑張って頂くと良いと思います。また長期服用すると血液の凝固能が高まる可能性があることも重要な副作用として挙げられます。詳しくは以前のコラムでお話しましたのでそちらも参考にしていただきたいですが、低用量ピルの長期服用で血栓症を発症する確率は0.05%程度、さらに当院では定期的な血液検査で確認しながら安全にお使いいただいておりますのでご安心を。ただ残念ながら、今はネット等で出所不明のピルを個人で入手し、医師のチェックなしで使っている方もおられるようです。ご自身の健康のためにも定期的に血液検査をしながら、医師の管理の元使って頂くことが重要です。一度失った健康を取り戻すのは容易なことではない場合が多いですから。
その上で思春期のお子さんにお使い頂く際、心配される方が多いのは骨形成に対する影響です。2023/11/10のこのコラム、更年期のところで詳しく説明しましたが、女性ホルモンであるエストロゲンには骨の新陳代謝を調整する働きがあります。ですから骨が盛んに形成される時期にはピルを含むエストロゲン製剤は使いづらいわけですが、初経後には成長期の骨成長が終了していると考えられるため骨形成に関しての心配はありません。前回紹介した、「初経後3カ月が経過すれば安全に使用できる」というWHO(世界保健機構)等の見解はそのような意味でもあります。むしろ骨形成には適切な量の運動が不可欠なので、月経痛等で動かなくなることが骨の成長に良い影響を与えないということは十分に考えられることです。
またピルは避妊でお使い頂く方が多いお薬ですので、ピルで妊娠できなくなることを心配される方がものすごく多いです。もちろんピルには高い避妊効果がありますが、妊娠をご希望される時期になったら服用を休止することで必ず妊娠する力は戻りますのでこちらもご安心を。むしろ、これまで何度も述べましたが、ピルは妊娠する力を維持するためにも早くからの使用して頂きたいお薬です。
さらに都市伝説的に「ピルは太る」というのがあるようですが、完全な都市伝説です。ただしピルによっては「むくみ」が出る場合があります。その場合はピルの種類を変更すれば改善しますし、むしろむくみの改善にピルを処方することもあるくらいです。またニキビが多くなってしまう方もおられますがこちらも同様です。ニキビの改善に有効なピルがあります。

このように、基本的にはピルは大変に安全なお薬ではありますが、数あるピルの中で適切なピルを選択していくことが大切です。良いお薬ですので、専門知識と多様な患者さんへの処方経験を持つ専門医の管理の元、適切かつ安全に使用して頂きたいです。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

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