ドクターコラム

2023.07.01更新

今回はHRT(Hormone Replacement Therapy:ホルモン補充療法)につきお話しましょう。
更年期にはそれまで上手に月経を回したり体調を整えてくれていた卵巣からの女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の分泌が年齢とともに少なくなり、そのギャップが症状として現れる方がいらっしゃいます。この女性ホルモンの減少そのものは年齢にしたがい必ず起こってくることですから病気ではありませんが、日常生活に支障をきたすような症状のある場合は更年期障害として治してあげなければならないと思います。
こうした女性ホルモンの減少が原因であれば、「そのホルモンを補ってあげれば良い」というのが、HRT=ホルモン補充療法の考え方です。
HRTに使用されるお薬には内服薬、貼り薬、塗薬があります。貼り薬、塗り薬は経皮薬と呼ばれ、薬剤が皮膚から吸収され直接血管に入りますので、胃や腸への負担が少なく胃腸が弱い方などに良いでしょう。皮膚が弱い方は内服薬が良いでしょう。また閉経前の方と閉経後の方、そして子宮の有無によって処方内容が異なります。お一人お一人に合った剤形、内容で処方させて頂きます。どの剤形でも効果は同じです。すべて健康保険が適用されます。
不足していたエストロゲンが補充されると、乱れていた自律神経のバランスが整い、特に、「のぼせ」「ほてり」「発汗」などのホットフラッシュに高い効果を発揮します。そのほか、イライラや気持ちの落ち込みが改善したり、記憶力や集中力が戻ったりして自信を取り戻して前向きになるなど多くの症状が改善します。また、こうした更年期症状緩和のみならず、コラーゲンを増やし皮膚や粘膜に潤いを与える、骨粗鬆症の予防、悪玉コレステロールを低下させ動脈硬化の予防、認知症リスク低下、胃癌、大腸癌、食道癌、肺癌などの悪性腫瘍のリスクの軽減なども期待できます。
そもそも、梅雨はなぜ「梅」の雨なのでしょうか?梅の花の時期はとっくに過ぎているのに。これは諸説あるようですが、梅の実が熟すこの時期、天候不順で体調を崩しがちなので、梅の果実は古来、身体に良いとされてきましたから、「梅の実も熟したことだから梅でも摂って健康に留意しよう」との意味かもしれませんね。また、この時期は麦雨(ばくう)、五月雨(さみだれ)、長雨(ながめ)などとも様々に表現されることから、うっとおしいこの時期、健康に留意し何とか乗り越えようという古人の智恵なのかもしれません。どうか教養ある食生活を心がけて頂き、心豊かに乗り切りましょう。

次回はHRTのリスク、検査などにつきお話しさせて頂きます。

根本産婦人科医院 院長 根本 将之

 

投稿者: 医療法人社団凌雲会

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