ドクターコラム

2023.07.21更新

途中で緊急情報を挟ませていただきましたが、再び更年期治療HRT(Hormone Replacement Therapy)の副作用、検査について説明させていただこうと思います。

HRTで補われるエストロゲン(女性ホルモン)は、そもそも子宮内膜を厚くし受精卵が着床しやすいようにしたり乳腺を発達させたりという働きがある、というお話を前にさせて頂きました。したがいましてエストロゲン製剤だけを長期間使うと、子宮の内膜が増え続けて子宮体がんのリスクが高まることが知られています。そのため、ホルモン補充療法を行う際には、エストロゲン製剤に加えてもう1つの女性ホルモンである「黄体ホルモン製剤」も併用します。黄体ホルモンには、内膜の増殖を防ぐ働きがあり、併用することで子宮体がんのリスクを抑えることができるのです。エストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤の2つを併用してホルモン補充療法を行えば、子宮体がんの心配はありません。もちろん手術で子宮を摘出している場合には、子宮がんの心配がないのでエストロゲン製剤だけで治療を行います。
いずれにしましても年に1回の子宮癌検診は必ず受けて下さい。当院では、市川市より委託され公費による子宮がん検診を行っています。ご希望の方には超音波にて、子宮筋腫・子宮腺筋症、子宮内膜症、子宮内膜増殖症等の子宮疾患、卵巣嚢腫等の卵巣疾患もチェックも行っています。
また乳がんに関しては、20年ほど前に「ホルモン補充療法によって乳がんの発症が増加する」という報告があったため心配される方もいらっしゃいます。しかし、その後の研究でホルモン補充療法が乳がんの発症に与える影響は、肥満やアルコール摂取が与える影響と同程度、つまりとても小さいということが分かってきました。そのため現在では定期的に乳がん検診を受けていれば、ホルモン補充療法を5年以上続けることも可能ですのでご安心下さい。ただ、エストロゲンが関与する乳がんや卵巣がんを発症したことがある人は残念ですがHRTを受けることはできません。医師にご相談ください。

なお、その他の副作用の自覚症状としては、このシリーズ②にて詳細紹介しております。ご参照ください。

うっとおしい梅雨ももう少しでしょうか。お身体ご自愛ください。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

スタッフブログNEW Babies献立日記