ドクターコラム

2023.09.01更新

前回、月経前症候群(PMS:PreMenstrual Syndrome)は「ホルモンバランスの乱れが原因ではない」、むしろ「ホルモンが正常で、きちんと排卵している方に誰でも起こりうる症状」である、したがって排卵を抑えてあげれば何とかなるというお話をさせて頂きました。今日は治療についてです。

排卵を抑えるといいので、まずはピル。(ピルの一般的な話は何回か前に更年期HRTのところで触れましたので興味ある方はそちらを。)ピルには排卵後に分泌される黄体ホルモンが含まれています。黄体ホルモンを投与することで常に黄体ホルモンが存在しているという状態となります。そして黄体ホルモンが存在しているという状態は排卵後の状態ですから、黄体ホルモンがあると脳は排卵は終わっっていると認識するわけです。つまりこれ以上排卵させる必要がないと判断するため排卵が抑えられます。
ピルにはエストロゲンの量の違いと黄体ホルモンの種類の違いで様々なものがありますが、数多くあるピルの中で、我々が参考にしている『OC・LEP(ピルのことです)ガイドライン』には、数あるピルの中でも「ドロスピレノン含有」のものがPMSに効果が期待できるとの記載があります。ドロスピレノンは黄体ホルモンの一種です。やや専門的な話になりますが、ドロスピレノンには黄体ホルモンの働きとともに、抗ミネラルコルチコイド作用と抗アンドロゲン作用という作用があるため、ニキビやむくみの予防や改善にも寄与すると考えられます。これはドロスピレノンが体内で分解され活用されていく流れの中で出てくる反応物質が、抗ミネラルコルチコイド作用と抗アンドロゲン作用という作用を持つためですが、実はまさにこの中間反応物質もPMSにドロスピレノンが有効な理由なのではないかとの説があります。当院ではドロスピレノン含有の「ヤーズ」というピルを処方します。

 PMSの治療、まだ漢方、サプリ、抗うつ薬など様々あるのですが、また長くなるので次回。
記録的な猛暑が続きます。お身体ご自愛ください。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2023.08.25更新

前回、多くの女性が月経前症候群(PMS:PreMenstrual Syndrome)を経験しているにも関わらずほとんどの方が我慢している、そして女性の社会活躍のうえでもPMSは多くの弊害があるというお話をしました。
このPMS、最近では様々認識されるようになったようで、患者さんに分かりやすいように作られたパンフレットもいろいろありますし、大塚製薬のサイト(PMS(月経前症候群)ラボ (otsuka.co.jp))にもチェックシート的なものがありましたので参考にしてみるのもいいかもしれませんね。
原因ですが、説はさまざまありますがまだ分かっていません。ただ多くの患者さんが誤解されておられますが、ホルモンバランスの乱れが原因ではないことは分かっています。PMSの方と非PMSの方の女性ホルモンの動態を調べた研究で、両者には全く差がないことが示されています。多くの方が「ホルモンバランスを整えたい」といらっしゃいますが、PMSの原因はホルモンバランスの乱れではないのです。また同じ方でも、無排卵周期の時は症状がないことも分かっています。ですから、今、分かっていることを、誤解を恐れずに一言で言えば、「ホルモンが正常で、きちんと排卵している方に誰でも起こる症状」と言うことが出来ます。ですから、排卵を抑えてあげれば何とかなるわけで多くの方にピルで楽になっていただいています。
ただピルには抵抗が・・・、という方も多いので、ピルをはじめ、漢方、サプリ等々、他の選択肢も様々です。

次回は具体的な治療法についてお話しましょう。

根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2023.08.11更新

前回、女性の「隠れ我慢」についてお話させて頂きました。今回はその中で触れた月経前症候群(PMS:PreMenstrual Syndrome)についてです。
PMSは、「月経前3~10日の間に続く心理的、身体的症状で、月経とともに減退、消失するものが、過去の生理で3回以上連続して起こっている場合」と定義されます。心理的な症状は、うつっぽい、怒りやすい、イライラ、不安、混乱した気分などです。身体的な症状は、体重増加、手足のむくみ、乳房・おなかの張り、頭痛・筋肉痛などです。これらの症状のうちどれか一つでもあれば月経前症候群と診断されます。ですから例えば「そう言えばここ半年くらい、生理が始まるとスッキリするが、生理前は1週間くらいむくんだり、お腹が痛かったり、気分が落ち込む」方はPMSです。
女性の95%は月経前に何らかの症状を経験しており、その66%がPMSであることが分かっています。そしてなんと63%もの方々が何も対処していないことが分かりました。くしくも前回の「隠れ我慢」と同じ結果になります。おそらく、生理前の不調は当たり前と思い込んでいる人が多く、受診せず我慢しているのでしょう。女性の皆さんは頑張り過ぎです。
女性の社会活躍、働くうえでも月経前の症状は様々な弊害になっています。PMS症状により退職を考えたことがある人が58%、55%の方が昇進の辞退を考えたそうです。また学業・競技にも支障を来しているデータも出ています。
このように、多くの女性が経験し、女性の活躍を阻害しているにも関わらず、多くのPMSは治療されていないというのが実態です。受診して治療を行えば改善するのですから、我々産婦人科医がきちんと対応するべき疾患と考えます。

次回はもう少しPMSについて。
来週はお盆なのでお休みです。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2023.08.04更新

これまで更年期障害についてこれまで様々お話しさせて頂きました。愛読して頂いている方もおいでのようで、外来でするどい質問が多くなってきてうれしい限りです。するどいというよりは切迫したご自身の悩みを具体的におっしゃって下さるので、こちらも対応しやすくなっており良い相乗効果かと。

今日は、「隠れ我慢」についてお話させて頂きます。
1昨年、コロナ禍真っただ中の2021年1月に、漢方で有名なツムラが20代~50代女性10000人!を対象に、「実は不調なのに我慢して家事や仕事を行う『隠れ我慢』」の大規模実態調査を行いました。調査の前段階からツムラの担当の方に、「今度、こういう調査をしますので結果を楽しみに」「そのような方はいらっしゃいますか?」と予告はされていたのですが、『隠れ我慢』?聞いたことねえなと、さしたる結果も出ないだろうと軽く考えていました。
そしたらなんと、
・女性の約8割が不調でも我慢して家事・仕事を行っている
・20代、30代の女性が我慢も疲労も多い
・我慢を続けたことで6割!が体調を悪化させている
ことが分かりました。
こういった不調を相談できているかというと、そもそも誰かに相談できてたという方は半数以下。特に医師に相談しているのはわずか6.6%でした。
感じても我慢するという不調の種類を見てみますと、
1位 疲れ・だるさ
2位 イライラ感
3位 不安感
4位 PMS(月経前症候群)
5位 不眠
・・・・と続きます。更年期障害のところでもお話しましたが、どれもこれも、「私たち医師が関われば、そこそこ治してやれるのになあ」と思う症状ばかりです。もし我慢しているなら、体調を崩す前に一度医療機関にご相談してみてはと思います。
ツムラのホームページには詳しく載ってますので、また隠れ我慢チェッカーなるのがありましたので、
隠れ我慢チェッカー|ツムラ (tsumura.co.jp)
でチェックしてみてもいいかもしれません。
ツムラのリンクつながらないみたいなので、こちらの方がいいかもです
https://www.tsumura.co.jp/onemorechoice/

梅雨も明けましたがまだまだ災害レベルの猛暑が続きますね。お身体ご自愛ください。
次回はPMSにつきお話させて頂きます。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2023.07.28更新

更年期障害についてこれまで漢方薬、プラセンタ 、 HRT(ホルモン補充療法)とお話してきました。ただ、薬に頼りたくないとか、これらの治療は不安とか、効果がいま一つとかとおっしゃる方もいないわけではありません。当院にはそのような方のためには、鍼灸、アロマセラピー、サプリを上記治療法の組み合わせ、代替としてお勧めしています。
□鍼灸
更年期障害は女性ホルモンが減少することが原因ですが、そもそもホルモンの分泌は自律神経によって調整されています。当然ホルモンが減少すると逆に自律神経にも影響し、今度は自律神経が乱れます。この乱れた自律神経が、乱れたままホルモンを調節しようとするので負のスパイラルに入ってしまうのです。少なくなってしまったホルモンを補うのがHRT、少ないなりに血流を良くすることで回してあげようというのが漢方、そして調節している自律神経そのものを整えるのには鍼灸が一番です。鍼灸は長い年月の中で確立されてきた実績のある治療法です。単に一時的に血流を良くするのではなく、自律神経を整え、全身の状態そのものを良くすることを目指します。当院には国家資格を有する優秀な鍼灸師が常勤しています。更年期のみならず、自律神経や不定愁訴、痛み・しびれでお困りの方、薬に頼らずに健康に過ごしたい、いつまでも若々しくありたい方、一度お話を聞いてみて頂くのもいいかもしれませんね。

□アロマセラピー
更年期にはアロマの活用も有用です。植物の花や葉から抽出した精油の芳香成分を体内に取り入れることで心身の状態を良くすることを目指します。更年期障害に対しては、アロマを嗅ぐことで、幸せホルモンである「オキシトシン」が分泌されることが分かっています。このオキシトシンは、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをすることも明らかになっています。またストレスや不安の軽減、血圧が低下し心拍数が落ち着き、自律神経が安定する効果があることがわかっているので、幸せホルモンと呼ばれています。 したがいまして更年期だけでなく、女性ホルモンが減少しがちな生理前やマタニティブルーにも効果が期待できます。
このアロマ、ご自身で行うことも出来ますが、中々深いです。専門の勉強をした人のもとで行うのとそうでないのとは全然違います。是非ご相談下さい。

□サプリ 『エクエルプチ』(大塚製薬)
豆腐などの原料となる大豆に含まれるイソフラボンが、女性の健康に良いらしいというのが話題になって久しいですね。実は効果があるのはこのイソフラボンそのものではなく、イソフラボンが腸内細菌によって代謝されることにより産生されるエクオールという物質です。エクオールは女性ホルモンであるエストロゲンと似た化学構造を持つので、エストロゲンと同じような働きをするので、エクオールを摂取することで、更年期に減少したエストロゲンを補うことにもなることが期待できるということです。ですから豆腐、納豆、豆乳等をたくさん取ればいいじゃないかとお思いでしょうが、そもそも必要な量を摂るのは大変なことに加え、大豆イソフラボンが腸内で分解されないとエクオールにならないわけですが、残念ながらこのイソフラボンを分解しエクオールに変換してくれる腸内細菌を50%くらいの人しか持っていないことが分かっています。ですからせっかく一生懸命豆腐を食べてもエクオールにならなければエストロゲン様の作用は出ないので、イソフラボンをエクオールに変換した製剤を摂ることが合理的であるということになります。当院では、エクオール製剤として『エクエルプチ』を採用しています。1粒を小さくし飲みやすくしたものです。医院でしか手に入らないため興味のある方はご相談下さい(1カ月5000円)。

先にHRTとその他の組み合わせというお話をしましたが、当院の師長がまさにその効果を実感しています。
HRTの経皮貼付剤、メルスモン注射、漢方で元気よく働いております。
効果の始まりとしては、眠りの質がよくなったところからはじまり、ホットフラッシュが激減したとのこと。
経験を踏まえての相談が受けられますので、迷われている方は、師長へ相談をお勧めします。

長々とおつきあいいただきありがとうございました。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2023.07.21更新

途中で緊急情報を挟ませていただきましたが、再び更年期治療HRT(Hormone Replacement Therapy)の副作用、検査について説明させていただこうと思います。

HRTで補われるエストロゲン(女性ホルモン)は、そもそも子宮内膜を厚くし受精卵が着床しやすいようにしたり乳腺を発達させたりという働きがある、というお話を前にさせて頂きました。したがいましてエストロゲン製剤だけを長期間使うと、子宮の内膜が増え続けて子宮体がんのリスクが高まることが知られています。そのため、ホルモン補充療法を行う際には、エストロゲン製剤に加えてもう1つの女性ホルモンである「黄体ホルモン製剤」も併用します。黄体ホルモンには、内膜の増殖を防ぐ働きがあり、併用することで子宮体がんのリスクを抑えることができるのです。エストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤の2つを併用してホルモン補充療法を行えば、子宮体がんの心配はありません。もちろん手術で子宮を摘出している場合には、子宮がんの心配がないのでエストロゲン製剤だけで治療を行います。
いずれにしましても年に1回の子宮癌検診は必ず受けて下さい。当院では、市川市より委託され公費による子宮がん検診を行っています。ご希望の方には超音波にて、子宮筋腫・子宮腺筋症、子宮内膜症、子宮内膜増殖症等の子宮疾患、卵巣嚢腫等の卵巣疾患もチェックも行っています。
また乳がんに関しては、20年ほど前に「ホルモン補充療法によって乳がんの発症が増加する」という報告があったため心配される方もいらっしゃいます。しかし、その後の研究でホルモン補充療法が乳がんの発症に与える影響は、肥満やアルコール摂取が与える影響と同程度、つまりとても小さいということが分かってきました。そのため現在では定期的に乳がん検診を受けていれば、ホルモン補充療法を5年以上続けることも可能ですのでご安心下さい。ただ、エストロゲンが関与する乳がんや卵巣がんを発症したことがある人は残念ですがHRTを受けることはできません。医師にご相談ください。

なお、その他の副作用の自覚症状としては、このシリーズ②にて詳細紹介しております。ご参照ください。

うっとおしい梅雨ももう少しでしょうか。お身体ご自愛ください。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2023.07.20更新

16才-26才のキャッチアップ世代の方

子宮頸がんワクチンを受けて下さい!!

むし暑い日が続きますね。こまめに水分を摂り、涼しい場所で過ごして下さい。

前回、若い女性にHPVワクチンをお受けいただきたいと熱弁させて頂きました。
HPV(ヒトパピローマウイルス)は性的接触のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされている、言わばほとんどの大人が感染している一般的なウイルスです。性交渉によって感染するウイルスですが、特に性活動が活発な人に特有のウイルスというわけではなく誰でも当たり前に感染します。小6-高1のまだ小さなうちににワクチンをお受けいただきたいのは、Sexual Debut(性交渉開始)前、つまりHPVに暴露する前に将来の感染を食い止めたいからです。この年頃の娘さんをお持ちのお母さん、知り合いのいる方、是非勧めてあげて下さい。
一方で、それならもはやSexual Debutの可能性がありうる、いわゆるキャッチアップ世代(16才-26才)の方にはワクチンを打っても意味がないのではと、このコラム、ありがたいことに読んでいただいているようで、この1週間で多くの方にこのご質問を頂きました。確かに性経験があればHPVに感染している可能性はあります。ただ細かいことを言いますと、200種類程あると言われているHPVの中で、特に発がんに至りやすいHPVハイリスクタイプがHPV16/18/31/33/45/52/58型の7種類であり、Sexual Debut後であってもこの7種類全ての型のウイルスに感染している可能性は非常に少ないことが分かっているのです。例えばHPV16に感染してしまったとしても、残る6つの型のウイルスを予防できるわけで、ワクチン接種後に期待される子宮頸がん罹患率の低下をみても、確かに16才までの接種で88%低下することに比べると下がりはしますが、17~30才での接種でも53%も低下させることが出来ることが明らかになりました。ですからこの世代の方にも是非接種して頂きたいわけですが、前回お話した通り、この現在16才-26才のキャッチアップ世代の方に対する公費による接種制度では、来年2024年9月までに1回目を接種しなければ間に合わないのです。このコラムで前回、今回と急きょお知らせしたのもそのためです。
この世代の方は、もちろんあまり産婦人科には馴染みのない方でもあります。ワクチン接種は他科でも実施しているようですので、どちらでも構いませんなるべく早く受けて下さいね。ただこれほど重要なワクチンですが、婦人科以外の医師はそもそも子宮がんの患者さんを受け持ったことは無いでしょうし、以前の副反応の経緯からか接種する側もやはり婦人科以外の方は二の足を踏む傾向もあるようです。その際はがんばってこちらにお越し下さい。
副反応など何かあっても必ず対応します。この8年間で体制、ノウハウが確立してますので安心してお受け下さい。また何度相談に来ていただいて構いません。ご理解いただけるまで説明します。
繰り返しますが、定期接種世代、キャッチアップ世代の娘さんをお持ちのお母さん、知り合いのいる方、ぜひ勧めてあげて下さい。

おつき合いいただきありがとうございました。次回からはまた更年期に戻ろうと思います。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2023.07.11更新

緊急必見情報
「お母様!娘さんの将来をお守りください!
未来のために子宮頚がんワクチンを受けましょう。」

HPVワクチンの案内は市から届きましたか?
子宮頚がんは30代女性の癌の罹患率で乳がんについで2番目に多く、しかも20~40才代の方に多く発症するため、若い女性、小さいお子さんがいるお母さんが亡くなる恐ろしいがんです。
でも幸運にもこのがんには予防する方法があるのです。それが子宮頸がんワクチンです。
このワクチン、接種開始当初は副反応が出る方がいらしたため、しばらくの間積極的な接種が行われませんでした。この間にも世界では120か国以上で接種が進められ、カナダ87%、イギリス83%、オーストラリア82%の接種率を達成。オーストラリアでは「2028年には子宮頸がんが撲滅される」という予測結果が出たほどです。
この間、日本は大きくおくれてしまい、2021年秋8年ぶりにHPVワクチンの積極的勧奨が再開されたにも関わらず思ったほど接種率が上がらず、現状日本では6%程度に留まっており、毎年10000人が子宮頸がんになり3000人が亡くなっています。
詳しいことは次回お話しますが、今回この話題を取り上げたのは、ワクチンの積極的勧奨が無かった時期、接種を受けられなかった現在16才-26才のキャッチアップ(今までできてないことに追いつくためにやる)世代の方に早く接種を受けて頂きたいからです。というのもこの公費によるキャッチアップ接種制度は3年間しかなく、期限が来年度までですので3回の接種が来年度までに完了されなければなりません。つまり逆算すると、あと1年、来年2024年9月までに1回目を接種しなければ間に合わないという差し迫った時期にきているのです。現在私のもつ大きな不安は、このワクチン、自費でお受けいただくと約10万円かかりますので、ますます接種が進まなくなることは火を見るよりも明らかで、日本においてだけ子宮頸がんで若い女性、小さいお子さんをお持ちのお母さんが亡くなってしまうという悲劇が続いてしまうことです。
どうか副反応などその他心配なことは十分わかりますが、何度でも相談に来ていただいて構いません。ご理解いただけるまで説明します。
またキャッチアップ世代の娘さん、知り合いのいる方、ぜひ勧めてあげて下さい。

今回はHRT編2の予定でしたが、すみません、次回もう少しワクチンのお話をさせて頂き、次次回から、また更年期の付き合い方に戻ろうと思います。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2023.07.02更新

うっとおしい日が続きますね。
今回、次回とHRT(Hormone Replacement Therapy:ホルモン補充療法)の副作用、検査について説明させていただこうと思います。
更年期障害は卵巣からの女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の分泌が年齢とともに少なくなり、そのギャップが症状として現れることが考えられるため、こうした女性ホルモンを補ってそのギャップを埋めてあげればいいというのがHRTの考え方です、というのは前回お話しました。従いましてHRTの副作用とはその補ったホルモンが引き起こす困った症状ということになります。
女性ホルモンは、そもそも子宮内膜を厚くし受精卵が着床しやすいようにしたり、乳腺を発達させたりという、言わば妊娠、授乳に備える働きがあったわけですから、そのホルモンが補われると、最初は子宮内膜が厚くなることで不正性器出血が起きたり、乳腺が発達することで乳房のはり、痛みなど出てくる方もいらっしゃいます。その他、そもそもホルモン剤が合わず頭痛がしたり、気持ち悪くなるなどの副作用が出ることもありますが、いずれにしましても2カ月目、3カ月目と段々気にならなくなり自然に治まることが多いです。また治まらなければ量を調節したり、処方を変更しますので、これらの症状が現れたからといって自分の判断で中止せず必ずご相談ください。
 またエストロゲンの重大な副作用として、ごくまれに凝固系の機能亢進により血栓症を引き起こすことがあります。ご存じの通りケガをして出血したときなどは血液内の凝固系(主に血小板)の働きで止血するわけですが、その止血の機能が高まり過ぎると血管の中で固まってしまい、その固まり(血栓と言います)が脳、心臓、肺などに飛べば脳卒中、心筋梗塞、肺梗塞を引き起こしてしまいます。そのため、特に使い始めの時期には慎重に様子を見ます。従いまして、喫煙や肥満がある人は血栓症のリスクが高いため、エストロゲン製剤の投与には特に注意が必要です。脳卒中、心筋梗塞にかかったことがある人は、ホルモン補充療法を受けることができません。ホルモン補充療法を受けられるかどうかは、担当の医師に確認してください。
 こうしたことを踏まえ、当院では半年に一度血液検査をさせて頂き副作用が発現する前にその兆候を捕まえるようにしています。つまり安全にお使いいただいていることを確認しながら安心していただけるようにしていますので、ご安心を。逆にネットなどでこうしたホルモン製剤をご自身で入手してる方はとても心配です。ご自身で必ずチェックを受けるようお願いします。

また長くなってしまった。スタッフに怒られる。
次回は、もう少し副作用について。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

投稿者: 医療法人社団凌雲会

2023.07.01更新

今回はHRT(Hormone Replacement Therapy:ホルモン補充療法)につきお話しましょう。
更年期にはそれまで上手に月経を回したり体調を整えてくれていた卵巣からの女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の分泌が年齢とともに少なくなり、そのギャップが症状として現れる方がいらっしゃいます。この女性ホルモンの減少そのものは年齢にしたがい必ず起こってくることですから病気ではありませんが、日常生活に支障をきたすような症状のある場合は更年期障害として治してあげなければならないと思います。
こうした女性ホルモンの減少が原因であれば、「そのホルモンを補ってあげれば良い」というのが、HRT=ホルモン補充療法の考え方です。
HRTに使用されるお薬には内服薬、貼り薬、塗薬があります。貼り薬、塗り薬は経皮薬と呼ばれ、薬剤が皮膚から吸収され直接血管に入りますので、胃や腸への負担が少なく胃腸が弱い方などに良いでしょう。皮膚が弱い方は内服薬が良いでしょう。また閉経前の方と閉経後の方、そして子宮の有無によって処方内容が異なります。お一人お一人に合った剤形、内容で処方させて頂きます。どの剤形でも効果は同じです。すべて健康保険が適用されます。
不足していたエストロゲンが補充されると、乱れていた自律神経のバランスが整い、特に、「のぼせ」「ほてり」「発汗」などのホットフラッシュに高い効果を発揮します。そのほか、イライラや気持ちの落ち込みが改善したり、記憶力や集中力が戻ったりして自信を取り戻して前向きになるなど多くの症状が改善します。また、こうした更年期症状緩和のみならず、コラーゲンを増やし皮膚や粘膜に潤いを与える、骨粗鬆症の予防、悪玉コレステロールを低下させ動脈硬化の予防、認知症リスク低下、胃癌、大腸癌、食道癌、肺癌などの悪性腫瘍のリスクの軽減なども期待できます。
そもそも、梅雨はなぜ「梅」の雨なのでしょうか?梅の花の時期はとっくに過ぎているのに。これは諸説あるようですが、梅の実が熟すこの時期、天候不順で体調を崩しがちなので、梅の果実は古来、身体に良いとされてきましたから、「梅の実も熟したことだから梅でも摂って健康に留意しよう」との意味かもしれませんね。また、この時期は麦雨(ばくう)、五月雨(さみだれ)、長雨(ながめ)などとも様々に表現されることから、うっとおしいこの時期、健康に留意し何とか乗り越えようという古人の智恵なのかもしれません。どうか教養ある食生活を心がけて頂き、心豊かに乗り切りましょう。

次回はHRTのリスク、検査などにつきお話しさせて頂きます。

根本産婦人科医院 院長 根本 将之

 

投稿者: 医療法人社団凌雲会

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