ドクターコラム 「思春期のダイエット〜将来の自分のために護るべきこと〜」

思春期は、将来、妊娠・出産ができる体をつくる時期というだけではなく、一生を通した体作りに大切な時期です。女性ホルモン、エストロゲンには丸みを帯びた女性らしい身体作り、頭髪や皮膚に潤いを与える等、健康的な身体を作る役割があります。思春期に女性の顔や体がふっくらと丸みを帯びてくるのは、将来の妊娠・出産にそなえての準備であり、けっして肥満なわけではなく正常な変化です。この女性の身体にとって大変に大事な時期である思春期に、不適切なダイエットや食事が偏ったりしますと当然様々な支障が出てきます。
前回、急激な体重減少により生理が止まってしまうのは、ある意味、身体のシステムが引き起こす防御反応のようなものですというお話をしました。そのメカニズムの一つが女性ホルモンの減少です。女性ホルモン(主にエストロゲン)は、生理をうまく回したり、妊娠する条件を整えたりするだけではなく、骨形成およびコレステロールを分解する働きを持つことは以前このコラムで述べました。
骨形成については骨粗しょう症のところで触れました。骨も皮膚や髪と同じように新陳代謝を繰り返しています。古くなった骨は壊され、新しい骨が補われています。この古くなった骨を壊す細胞を破骨細胞といい、新しい骨をつくる細胞を骨芽細胞といいますが、この破骨細胞が骨を壊すスピードと、骨芽細胞が骨をつくるスピードの絶妙なバランスで骨量が安定し強さが保たれているのです。一方、エストロゲンには破骨細胞の働きを適度に抑制する働きがあります。つまりエストロゲンが少なくなると、骨を壊すスピードが抑制されず壊され過ぎてしまうため骨量が減ってスカスカになってしまうわけです。一方この思春期の時期は、生涯で唯一「骨密度が増える時期」です。そのため、この時期に極端なダイエットをして栄養素が不足した状態が続くと、骨密度が充分に増えることなく生涯を過ごすことになります。骨密度が低いまま高齢期にさしかかると骨粗しょう症になる可能性が高まります。
コレステロールについては更年期のところでお話させて頂きましたが、エストロゲンは肝臓での、特に悪玉コレステロールの代謝を促進する働きをしています。つまりエストロゲンが少なくなるということは、コレステロールが分解されず高コレステロール血症になりやすくなる、つまり将来高コレステロール血症による脳卒中、心筋梗塞等のリスクが高まるということです。

以上、思春期に急激なダイエットをしてほしくない主な理由を挙げさせて頂きました。生涯にわたる健康な体作りが必要な大事なこの時期は、精神的にも揺れ動く難しい時期でもありますね。親御さんとして対応ご苦労されることも多いかと存じます。以前も宣伝しましたが、当院には自身の子育て体験も含め、経験豊富で優秀な女性スタッフがたくさんおります。経験だけではなくものすごく良く勉強しています。最初から医師に相談はハードルが高いという方は、まずはスタッフがお話を聞きますので遠慮なくお越しください。

三寒四温、天候が不順になる時期です。お身体ご自愛ください。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

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