ドクターコラム 「思春期の月経困難症〜ピルを味方につける意義、実例〜」

思春期からの低用量ピルについてもう少し。

まず低用量ピル内服中に月経量が減少、あるいは月経が来なくなって心配される方がしばしばおられます。受精卵が着床しなかった場合の子宮内膜が排出されるのが月経血ですが、これはピルに子宮内膜を厚くしないという作用があるためで、服用をやめれば戻ってきますので心配することはありません。また月経をデトックスのように感じておられる方が多くおられ、月経が無いことで月経血や子宮内膜が子宮内にたまってしまうのではと心配される方も多いですが、これも明らかに勘違いですね。元々低用量ピルの作用で内膜は薄くなっているわけですから、無いものが出ないのは理にかなったことです。
それどころか、最近では低用量ピルをずっと飲み続ける連続投与という方法が主流になりつつあります。ずっとと言いましても、具体的には約3カ月飲み続け、一度月経を起こしてもう3カ月というリズムです。詳しくはまた別の機会にでもと思いますが、このように、医学的には低用量ピル服用中、毎月月経が来る必要ありません。ちなみに連続投与の安全性や、ピル服用後の月経再開、妊孕性は通常の使用方法と同じですし、むしろ連続投与の方が月経量改善、月経痛改善に効果が高いという研究結果も出始めています。
一般の方も含めた調査で割り出された試算ですが、わが国では月経随伴症状のために1年間で約7000億円!!もの経済損失があるとのことです。これは月経痛などの症状により欠勤を余儀なくされたり、仕事のパフォーマンスが下がったりすることが原因でしょう。また女性の社会進出、特に昇進への影響は明らかになっています。これはもちろん中高生も同様で、海外のデータになりますが月経困難症のある9-18才の方の調査では、月経困難の無い方に比べ欠席する割合が約4倍になるという研究結果が出ました。海外では高校生にも生理休暇をとの動きもあるようですが、日本はまだまだですね。休むにしても、特に担任が男性であると言いにくいということもあるでしょう。また部活の顧問が女性なのに理解がなく、やる気が無いと判断されレギュラーを外されたなんてこともありました。お母さんはじめ女性の方が厳しいかもしれません。頭ごなしに我慢しなさいとか、怠けてるとか言わないで、どうか理解してあげるためにも一度医療機関を受診させてください。いずれにしても学業・部活等に支障を来すことはもとより、欠席日数が増えることで受験の際の内申点に影響が出るのではという心配も生じます。

月経困難で受験勉強に集中できないことを避けるため低用量ピルを開始したところ、生理痛で学校を休むことが無くなり、さらに受験日当日に月経があたるのを避けるため月経移動ピルで対応し受験に成功できたとか、同様に部活の練習・大会でのパフォーマンスが維持できたなどと喜んでいただくことはしばしばです。

方法は山ほどあります。ありますが、患者さんに合わせてオーダーメイド的に対処しないとうまくいきません。まずは良く分かっている医師のいる医療機関を受診してくれるといいと思います。
根本産婦人科医院 院長 根本 将之

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